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脈が飛ぶ

「脈が飛ぶ」感覚とは?どんな感じ?

脈が飛ぶとは、次のような症状をさします。

  • 突然「ドキッ」とするような脈の乱れを感じる
  • 心臓が跳ねるような感覚がある
  • 一瞬、胸が詰まるような違和感を覚える
  • 手首の脈を触れると、基本的には規則的だが、時折リズムが乱れる
  • 脈が飛んだ後、心臓が強く打つように感じ、不快感がある

脈が飛ぶ原因

手首や首の動脈に指を当てると、「トクトク」と規則正しく脈打っているのが確認できます。この血管の振動が「脈(みゃく)」です。
脈のリズムは心臓の拍動と連動しており、心臓が規則正しく拍動していれば、動脈で触れる脈も一定の規則を刻みます。逆に、心臓のリズムが乱れると、脈にも乱れが生じます。そのため、脈の乱れを自覚した時に、胸の違和感やドキドキ感を感じることがあります。
脈が飛ぶ原因として最も考えられるのが「不整脈」です。不整脈とは、心臓の拍動リズムが乱れる状態のことを指します。不整脈には様々な種類がありますが、脈が飛ぶような感覚が現れるものとしては、期外収縮や心房細動などが代表的です。

期外収縮

期外収縮は、予定よりも早く心臓が動いてしまう不整脈の一種です。通常の拍動とは異なるタイミングで心臓が収縮するため、「ドキッ」とした違和感を覚えることがあります。また、期外収縮の後には一時的に脈が遅れることがあり、それによって「ふらっとする」「ボーっとする」といった症状が現れることもあります。
期外収縮は健康な方にも起こるものであり、その多くは特別な治療を必要とせず、心配する必要のないものです。ただし、心臓に何らかの疾患がある場合や、期外収縮の種類や頻度によっては、治療を行うことで症状の改善やリスクの軽減に期待できる可能性もあります。

心房細動

心房細動は、心臓の拍動が不規則になる不整脈です。心臓が不規則に動くことで、血液を押し出す量が毎回異なり、強く押し出される時もあれば、弱くなる時もあります。その結果、脈の強さが変化し、「動悸」として感じられたり、「脈が飛ぶ」「脈が延びる」といった感覚に繋がったりすることがあります。
心房細動はどの年代でも起こり得る不整脈ですが、加齢とともに発症リスクが高くなる傾向があるため、高齢者は注意が必要です。心房細動を長期間放置すると、心不全や脳梗塞の原因となる可能性があるため、基本的には治療が必要な不整脈とされています。

洞機能不全

心臓のペースメーカーのような役割を担っている「洞結節」という部分の機能異常によって起こる不整脈です。洞結節からの電気信号が正常に出なくなることで、心臓の拍動が遅れたり、時折脈が抜けたように感じられたりします。その結果、「脈が延びた」と感じることに繋がります。洞結節からの信号が長時間出なくなると、心臓の拍動が止まったままになることがあり、これにより、ふらつきやめまい、重症の場合には失神といった症状が現れることがあります。

房室ブロック

房室結節の機能異常によって起こる不整脈です。心房から心室への電気信号の伝達がスムーズにいかなくなることで生じます。洞機能不全と似た症状が現れ、脈が抜けたように感じたり、脈が延びたように感じたりすることがあります。重症の場合には、ふらつきやめまい、失神などの症状が起こることもあります。

脈が飛ぶ「期外収縮」の原因は?

心臓の病気

心不全

狭心症や心筋梗塞、心筋症、弁膜症、高血圧、不整脈などが原因で、心臓の働きが弱くなった状態です。主な症状には、運動時の息切れ、むくみ、体重増加などがあります。

狭心症

狭心症は、生活習慣病などにより動脈硬化が進行し、心臓の冠動脈が狭くなることで、酸素や栄養が十分に届かなくなる病気です。胸の痛みや圧迫感などの症状が現れ、これらの症状は特に、運動時など心臓に負担がかかる場面で強く感じられます。

心筋梗塞

動脈硬化によって冠動脈に血栓ができ、心筋への酸素や栄養の供給が途絶えることで、心筋細胞が壊死してしまう病気です。重症の場合には命に関わることもあります。発症時には激しい胸痛があり、痛みが左肩、首、下顎、みぞおちなどに広がることもあります。緊急の医療対応が必要です。

心臓弁膜症

心臓の4つの部屋(左心室・左心房・右心室・右心房)の間にある弁がスムーズに働かなくなることで、心臓のポンプ機能に障害が生じる病気です。原因には加齢、感染症、外傷、先天的な異常などがあります。初期は症状がないこともありますが、心不全になったり不整脈、動悸、息切れなどの症状が現れたりする状態になると、治療が必要になる可能性があります。

高血圧症

塩分の過剰摂取や運動不足、喫煙などの生活習慣の乱れによって、血圧が慢性的に高くなる病気です。糖尿病や脂質異常症と同じように、自覚症状がほとんどないまま進行することが多いです。放置すると、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患のリスクが高まります。

自律神経の異常

期外収縮は、生活習慣の乱れや睡眠不足、カフェイン・アルコールの過剰摂取、過労、ストレスなどによって自律神経が乱れることにより、期外収縮が生じることがあります。多くの場合、こうした自律神経の影響による期外収縮は一時的なものであり、特別な治療を必要とせず、心配のいらないケースがほとんどです。

不整脈(脈が飛ぶ)になりやすい人の特徴

嗜好品や生活習慣が乱れている

  • コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェイン
  • アルコール
  • 喫煙
  • 睡眠不足
  • 過労
  • 精神的または身体的ストレス
  • 発熱
  • 脱水状態

上記のものは、交感神経を活性化させることで心拍数を増加させたり、不整脈を引き起こしたりすることがあり、動悸や脈が飛ぶといった症状に繋がる恐れがあります。日常生活を改善させた結果、これらの症状が軽減されたケースも少なくありません。

甲状腺疾患(バセドウ病)

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで心拍数が増加し、安静時でも心臓が速く打つため、「ドキドキ」「バクバク」といった動悸を感じる病気です。心房細動を合併することもあり、脈が飛ぶような感覚として自覚されることがあります。特に若い女性に多く見られ、動悸のほかに、体重減少、疲れやすさ、大量の発汗などの症状を伴うことがあります。
心房細動は治療が必要な不整脈ですので、脈の乱れに加えてこれらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

高血圧症

高血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に、必要以上の力を使っている状態です。この状態が長く続くと、心臓の筋肉に負担がかかり、心臓の電気信号が乱れることがあります。健康な心臓は電気信号によって規則的に拍動していますが、信号が乱れると「期外収縮」などの不整脈が起こってしまいます。
また、高血圧によって心臓が肥大することも期外収縮の一因です。心臓は過剰な負荷に対応するために筋肉を増やし、肥大化しますが、肥大した心筋では電気信号の伝わり方が不安定になり、期外収縮が起こることがあります。

脈が飛ぶとき行う検査

心電図検査

心電図検査は、心臓の電気信号を拾って波形として記録し、心臓のリズムや異常を画像に起こす検査です。ただし、短時間の検査では不整脈を捉えるのが難しいため、より長時間の記録が可能な24時間ホルター心電図検査が用いられることが多くなっています。

24時間ホルター心電図検査

小型の装置を身につけて、ご自宅で日常生活を送りながら心電図を24時間連続で記録する検査です。これにより、どのタイミングで、どのような不整脈が起こっているかを詳しく把握することができます。

心エコー検査

超音波を使って心臓のサイズ、収縮の状態、弁の動き、心筋の厚さや動きなどを詳しく調べる検査です。

脈が飛ぶときの治療方法

生活習慣の改善

不整脈の多くは特別な治療を必要としないものです。症状が気にならない場合は、定期的に検査を行いながら経過を見守るだけで十分です。ただし、動悸などの症状が気になる場合には、薬による治療を検討することもありますが、その前に生活習慣の見直しを試してみるのも有効です。
コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、不整脈を引き起こすことがあります。まずは1週間程度で構いませんので、これらの摂取を控えて、症状の変化を観察してみるのも良いでしょう。また、アルコールや喫煙も心拍数を増加させたり、不整脈の原因となったりすることがあるため、薬に頼りたくない場合は「飲まない・吸わない」を意識することが大切です。
さらに、睡眠の質を高めたり生活リズムを整えることで、自律神経が安定し、動悸や不整脈の改善に繋がることがあります。具体的には、適度な運動を取り入れること、入浴で体を温めること、就寝前の飲食を控えること、起床時間を一定に保つことなどが効果的です。
また、ストレスはご自分で完璧にコントロールするのが難しい場合もありますが、上記のように、ご自分で調整できる生活習慣を見直すことで、症状の軽減に繋がることがあります。忙しい日々の中でも、無理のない範囲で取り組めそうなことから始めてみましょう。

薬物療法

薬物治療は、不整脈の種類や症状の程度に応じて選択されます。治療の目的は、不整脈そのものを抑えること、不整脈による合併症を予防することなど多岐にわたります。以下に代表的な薬剤の種類とその特徴をご紹介します。

β遮断薬

心臓の交感神経系の働きを抑えることで、不整脈を抑制したり心拍数を減らしたりする効能に期待できる薬です。

カルシウム拮抗薬

頻拍の伝導を伝える部位に作用し、心拍数をゆっくりにする効果があります。頻拍発作時の頓服薬として処方されることもあります。

ナトリウムチャネル遮断薬

不整脈の発生をコントロールするために使用される薬剤です。ただし、効果が高い一方で副作用にも注意が必要なため、循環器専門医など、取り扱いに慣れた医師によって処方されることが多い薬でもあります。

抗凝固薬

血液が固まって血栓ができるのを防ぐ薬で、特に心房細動の患者様に処方されます。

カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションは、不整脈の原因となる心筋の部位にカテーテルを挿入し、高周波電流や凍結などで心筋細胞を破壊する治療法です。この治療は、特に心房細動や発作性上室性頻拍などの頻脈性不整脈に対して有効であり、薬物治療を続けても十分な効果を示さない場合や、薬の副作用が問題となる場合に選択されます。

受診の目安

健康診断などで不整脈を指摘された場合でも、他に異常がなければ過度に心配する必要はありません。しかし、以下のような症状を伴う場合には受診を検討しましょう。

めまい・冷や汗・吐き気がある

脈拍数の増加により「ドキドキ」とした動悸が感じられます。一時的で自然に治まる場合は問題ありませんが、動悸が激しくなり、めまいや冷や汗、吐き気などを伴う場合には注意が必要です。意識を失うこともあり、その場合は心室細動や心房細動などの重篤な不整脈の可能性があるため、早めに医療機関を受診し、検査を受けましょう。

激しい息切れを伴う

脈が遅くなることで体を動かすのが辛くなり、動作時に激しい息切れを感じることがあります。こうした症状が続く場合には、心不全を起こしている可能性もあるため、速やかな受診が必要です。

胸の痛みや不快感がある

目立った症状がないこともあれば、患者様によっては胸の不快感や胸痛が生じることがあります。
胸痛が長く続く場合には、狭心症や心筋梗塞の可能性も考えられます。また、脈のリズムが不規則になる場合には、心房細動などの不整脈が隠れていることもあるため、注意が必要です。