胸が痛い…「胸痛」の正体とは
「胸が痛い」と聞くと「心臓の病気では」と思われがちですが、実際には胸痛を引き起こす原因は非常に多岐にわたります。心臓周囲にある様々な臓器が原因となることがあります。
また、逆流性食道炎や肋骨の骨折、帯状疱疹などの内臓以外の病気や、精神的なストレスや不安などによって胸の痛みを感じることもあります。
子どもが胸痛を訴え始めるのは4歳ごろからで、特に思春期に多くみられます。原因不明のケースもありますが、心臓や血管の異常が関係している場合もあります。
お子さんが胸の痛みを訴えている場合には、「痛みが起こっている場所」「痛みが出るタイミング」「痛みの種類」「痛みの持続時間」などを聞き、気になる場合は当院へご相談ください。
子どもの胸痛の原因
筋肉・骨・神経
筋肉痛
日頃あまり使わない筋肉を使ったり、激しい運動をしたりした後に、胸の筋肉が痛むことがあります。このような場合、押すと痛みを感じることもあります。
打撲・外傷
胸をぶつけたり転倒したりした後などに、一時的な痛みが生じることがあります。
肋軟骨炎
胸の骨(胸骨)と肋骨を繋ぐ軟骨部分に炎症が起こり、痛みを感じます。特に思春期のお子さんに多い傾向があり、深呼吸や体を動かした時に痛むケースが多いです。患部を押すと痛みを感じます。
呼吸器
喘息
気管支の狭窄によって息苦しさが生じ、胸が締め付けられるような痛みを感じることがあります。咳や「ゼーゼー」という呼吸音を伴う傾向があります。
気管支炎・肺炎
風邪をひいた後に気管支や肺に炎症が生じると、咳とともに胸の痛みを感じることがあります。発熱や痰を伴う傾向があります。
過換気症候群
ストレスや不安により呼吸が過剰に速くなると、息苦しくなったり胸が痛くなったりすることがあります。手足の痺れが一緒に出ることもあります。
気胸
気胸は「胸腔内に空気が溜まり、肺がしぼんでしまった状態」で、呼吸が苦しくなったり、胸の痛みを感じます。気胸には、主に学童期の背の高い男子に多い傾向があり、外傷によって起こる外傷性気胸と、原因がはっきりしない自然気胸があります。
症状がない場合もありますが、多くは、胸から背中にかけての痛み、呼吸に合わせて痛む症状、呼吸困難、咳などを伴います。
消化器
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで胸焼けのような痛みを感じる病気です。胸の真ん中あたりが焼けるような感覚が特徴です。
便秘
長期間続く便秘により、胸痛が引き起こされるケースもあります。腸に便が溜まることで、腹部だけでなく、胸の周辺にまで圧迫感や痛みを感じることがあります。
心因性
ストレス
お子さんの中には、はっきりとした身体的原因が見つからない方もいます。学校での人間関係や家庭環境、受験のプレッシャーなど、ストレスによる胸痛が出ることもあります。このような場合には、心と体の両面からの対応が必要です。
心臓の病気
心筋炎
ウイルスや細菌などの感染症、川崎病、膠原病などが原因で、心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こる病気です。この炎症により、心不全や不整脈などの症状が現れることがあります。小児の心臓病の中では比較的稀な病気ですが、注意が必要です。
原因の中で最も重要なのはウイルス感染によるもので、主な原因ウイルスとしてはコクサッキーウイルス、エコーウイルス、アデノウイルスなどが挙げられます。これら以外にも、多くのウイルスが心筋炎を引き起こすリスク要因になります。
心膜炎
心膜炎は、心臓を包む膜(心膜)に炎症が起こることで、心嚢液が溜まり、心室の拡張が妨げられる病気です。乾癬や膠原病、先天性心疾患の手術後などに合併することがあります。感染性の心膜炎では、肺炎や膿胸などの周辺臓器、または感染性心内膜炎や敗血症など、心筋から炎症が波及することで発症します。免疫疾患が原因の場合は、心筋からの炎症の広がりによって起こることが多く見られます。
小児では、心嚢液が溜まることで心膜炎が発見されるケースが多くあります。
大動脈解離
大動脈解離は、大動脈の血管壁が裂けて、血液の流れる道が本来のものとは別にできてしまう状態です。この異常により、胸や背中に激しい痛みが生じ、大動脈が破裂したり、複数の臓器に障害を引き起こしたりするなど、重大な合併症を伴うことがあります。放置すると命を落とす危険性があるため、早急な対応が必要です。
胸が痛い時の検査
当院では、問診と診察を行った上で、重症の可能性が低いと判断された場合には、経過観察や痛み止めによる対応を行っています。ただし、胸痛が繰り返し起こる場合や、運動系のクラブ活動に参加しているお子さんの場合には、一度検査を受けることを勧めております。
胸部レントゲン検査
呼吸器系の原因となる気胸や喘息、心血管系の原因となる心不全による心臓の拡大や肺うっ血などを調べる検査です。
心電図検査
一般的な心電図検査です。過去の心筋梗塞の所見や先天性心疾患の可能性などを確認するために行います。
ホルター心電図検査
24時間装着するタイプの心電図検査です。心血管系が原因の胸痛を評価するのに、非常に有効とされています。胸痛はいつ起こるか分からないため、病院へ受診した時に、偶然痛みが出るというケースはほとんどありません。この心電図を装着して日常生活を送ることで、痛みが出た時の心電図を記録・評価できます。
また、不整脈の検出にも優れており、運動中の記録も可能です。部活動や体育のある日に装着していただくことで、心配な場面での心電図を確認でき、今後もその活動を続けるかどうかの判断材料になります。
胸痛は何科を受診する?
子どもが胸の痛みを訴える場合、小児科を受診しましょう。
胸が痛む原因が明らかに心臓にあると考えられるときは、小児循環器内科を受診することで、専門性の高い診察や検査を受けることができます。
受診する際のポイント
お子さんが胸の痛みを訴えた場合、まず以下のポイントを確認しましょう。
痛む場所・強さは?
どこが痛むのか具体的に聞いてみましょう。指で差せるような場所なのか、広い範囲に痛みがあるのかを確認しましょう。
また、「ズキズキする」「チクチクする」「押すと痛い」など、痛みの感じ方や強さを聞いてみることも大切です。
痛みが続く時間は?
- 痛みが一瞬で治まるのか、数秒または数分続くのか
- 痛みの続く時間やタイミング(例:朝からずっと痛む)
どんな時に痛がるか?
- 体を動かした時(走る、ジャンプするなど)
- 深呼吸をした時
- 安静にしている時
- 特定の姿勢をとった時
- 食事のタイミングと関係があるかどうか など
他の症状はあるか?
- 発熱、咳、息苦しさ、めまい、意識が遠くなる、動悸、吐き気、冷や汗などがないか、様子を伺いましょう
- 最近風邪をひいたなど、体調の変化がなかったか
痛みが和らぐ体制などはあるか?
- 楽な姿勢をとると痛みが軽くなるか
- 温めたり冷やしたりすると痛みが変化するかどうか