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心拍数が高い

「心拍数が高い(頻脈)」とは?

正常な心拍数は、安静時で1分間に60〜100回とされています。
これを超えると頻脈と診断されることがあり、特に120回以上になる場合は、何らかの疾患が関係している可能性があります。
心拍数が高い状態が続く場合は一度受診し、検査を受けるようにしましょう。

心拍数が高いとどうなる?

心拍数が高いと現れる症状

  • 動悸
  • 息切れ
  • 胸の痛み
  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 失神
  • 痙攣しながらの失神
  • 心房細動(心房が痙攣する状態)

これらの症状に心あたりがある場合は、早めに医療機関へ受診しましょう。

高血圧を伴うと心疾患リスクに

心拍数が速く、さらに高血圧の状態が重なると、不整脈や心筋梗塞などの心疾患のリスクが上昇します。
日本人の主な死因には心疾患、肺炎、脳血管疾患などがありますが、特に心疾患と脳血管疾患は高血圧が大きな要因となるため、注意が必要です。心拍数にも血圧にも気を配り、日頃から心疾患予防を意識することが大切です。

心拍数が高いときに考えられる原因

不整脈

不整脈とは、心臓の拍動が正常なリズムから外れ、速くなったり遅くなったりする状態です。心臓は電気信号によって規則的に収縮していますが、この電気の流れに異常が生じると、脈が不規則になったり、過度に速くなる頻脈性不整脈や、遅くなる徐脈性不整脈が起こったりします。
特に頻脈の原因として、頻脈性不整脈が深く関係しています。頻脈性不整脈にはいくつかの種類があります。

心房細動

心房細動は、心臓の上部にある心房が不規則かつ速いペースで細かく震えてしまう不整脈の一種です。そのため脈拍も不規則になり、脈にばらつきが見られます。加齢とともに発症率が高まる傾向があり、心房内に血栓ができやすくなることで、脳梗塞のリスクを高めてしまいます。

心房粗動

心房が1分間につき、約240〜440回の速さで規則的に電気的興奮を繰り返す不整脈です。心房細動と比べると、脈のリズムは比較的整っていることが多いです。ただし、心拍数が著しく速くなるところは共通しており、頻脈の原因となるケースもあります。

心室頻拍

心室頻拍は、心臓の下部に位置する心室が異常な電気信号を起こすことで発生する、危険性の高い不整脈です。この状態になると心拍数が急激に上昇し、心臓のポンプ機能が低下して血液を十分に送り出せなくなります。その結果、脳や全身への血流が不足し、意識を失うこともあります。重症化すると命に関わる可能性があるため、速やかな医療対応が不可欠です。

発作性上室頻拍(PSVT)

心拍が突然速くなり、しばらく一定の速さで続いた後、急に正常なリズムに戻るという特徴を持つ不整脈です。心拍数の急上昇により、動悸や胸の圧迫感、息苦しさなどの症状が現れることがあります。この不整脈は若い世代にも見られ、特に持病のない方でも発症することがあるため、注意が必要です。

心筋梗塞

心筋梗塞は、心臓の筋肉(心筋)に血液を送る冠動脈が完全に詰まり、酸素や栄養が届かなくなることで、心筋が壊死してしまう重篤な疾患です。原因の多くは、動脈硬化によって血管内に蓄積された脂質(プラーク)が破れ、その部分に血栓ができて血流が遮断されることにあります。
発症すると、突然強い胸の痛みが現れ、冷や汗、息苦しさ、吐き気、顔面蒼白などの症状を伴うことが多く、迅速な対応が命を左右します。心筋が酸素不足に陥ると、体は心拍を維持しようとして交感神経を活性化させるため、心拍数が上昇し頻脈が現れることがあります。さらに、心筋へのダメージが深刻な場合には、不整脈や心停止を起こすリスクも上昇します。
動悸や頻脈、激しい胸痛などの症状が突然現れた場合は、ためらわず救急車を呼び、速やかに医療機関で診察を受けてください。

狭心症

狭心症は、心臓の筋肉に血液を供給する冠動脈が狭くなることで、一時的に酸素や栄養が不足し、胸部に痛みや圧迫感が生じる疾患です。運動やストレスなどで心臓の酸素需要が高まった際に症状が出やすく、「胸が締めつけられるような感覚」が数分間続いた後、自然に治まるのが特徴です。
発作時には心筋が酸素不足に陥り、心臓は拍動を強めようとするため交感神経が刺激され、心拍数が上昇して頻脈が現れることがあります。心拍が速くなることで酸素の消費量がさらに増え、症状が悪化するという負のスパイラルに陥ることもあります。
主な発症原因は冠動脈の動脈硬化です。放置すると心筋梗塞などの深刻な疾患に繋がる可能性があります。胸の違和感や痛みだけでなく、動悸や頻脈などの症状もある場合は、早めに循環器専門医を受診し、適切な検査と治療を受けてください。

心不全

心不全とは、心臓の働きが弱まり、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。心臓の収縮や拡張の力が低下すると、体は血流を維持しようとして交感神経を活性化させ、心拍数を増やすことで補おうとします。そのため、安静時でも脈が速くなり、動悸や息切れ、強い疲労感などの症状が現れることがあります。
こうした頻脈が続くと、心臓にかかる負担がさらに増し、機能の低下を加速させる悪循環に陥ることもあります。心不全には、ゆっくり進行する慢性型と、急激に悪化する急性型があり、どちらも早期の診断と治療が重要です。

心臓弁膜症

心臓弁膜症は、心臓内にある4つの弁(僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁)のいずれかが正常に機能しなくなることで、血液の流れに障害が生じる疾患です。弁が十分に開かず血流が妨げられる状態は「狭窄」、逆に閉じきらず血液が逆流する状態は「閉鎖不全」と呼ばれます。どちらも心臓に過剰な負担をかける原因となります。
弁膜症が進行すると、心臓が効率よく血液を送り出せなくなり、心拍数が上昇して頻脈が起こることがあります。ポンプ機能の低下により、動悸、息切れ、倦怠感などの症状が現れることもあります。初期では自覚症状が乏しい場合もありますが、進行すると心不全や不整脈などの合併症を引き起こすリスクが高まります。
頻脈や動悸などの変化に気づいた際は、早めに循環器専門医の診察を受けましょう。現在では、薬物療法に加え、カテーテルによる低侵襲治療や外科的手術など、症状や重症度に応じた治療法が選択できるようになっています。

先天性心疾患

生まれつき心臓の構造に異常がある状態で、心臓の壁や弁、血管の形状や位置に問題がある疾患群の総称です。代表的な疾患としては、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、ファロー四徴症、エプスタイン病などが挙げられ、症状の程度は軽度から重度まで様々です。
多くの場合は小児期に診断され、病状に応じた治療や経過観察が行われますが、症状が目立たない場合には、成人になってから初めて診断されることもあります。例えば心房中隔欠損症では、小児期に心雑音が乏しいと見逃され、成人期に動悸や頻脈などの症状が出てから発見されるケースがあります。エプスタイン病も軽度のケースでは、長期間無症状のままで経過し、成人になってから心房性の不整脈(頻脈)を診断されることがあります。疾患が進行すると、右心房への負荷が増すことで心房筋の構造が変化し、心房頻拍や心房粗動などの不整脈が生じる可能性があります。
現在では医療の進歩により、ほとんどの先天性心疾患の患者様は早く診断されると、適切な治療によって日常生活を問題なく送れています。ただし、動悸や脈拍の異常が続く場合には、心機能の変化を見逃さないためにも、定期的な診察とフォローアップが欠かせません。

心拍数が高い人の特徴

貧血

血液中のヘモグロビン(Hb)濃度が基準より低下している状態であり、血液が希薄になることで脈拍が速くなる場合もあります。また、動悸や息切れ、めまい、倦怠感などの症状が現れることもあります。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)では、交感神経が刺激されることで、脈が速くなる頻脈や不整脈が生じることがあります。

糖尿病

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が慢性的に高い状態が続く疾患です。これは、血糖を下げる働きのあるホルモンであるインスリンの分泌不足や、インスリンの作用が十分に働かなくなることで起こります。病状が進行すると、神経や血管に障害が生じやすくなり、自律神経にも影響を及ぼすことがあります。交感神経と副交感神経の調整が乱れると、安静時でも心拍数が増加することがあります。また、低血糖や脱水など、急激な代謝の変化によっても心拍数が上昇することがあります。

不安・ストレスを抱えている、緊張する

不安や緊張、ストレスを感じていると、脈が速くなることがあります。この場合は、原因となる精神的な負荷が軽減されることで、自然に治まることが多いです。

疲労・睡眠不足

十分な睡眠が取れていなかったり、疲労が蓄積したりしている状態では、頻脈などの脈拍の異常が見られることがあります。

アルコール・カフェインの摂取

アルコールやカフェインの摂取によって、一時的に心拍数が上昇し、頻脈に似た症状が出ることがあります。カフェインはコーヒーやエナジードリンク、緑茶などに含まれ、脳を覚醒させる作用に加えて心臓の収縮力を高め、心拍数を増加させる作用を持っている物質です。そのため、短時間に多量のカフェインを摂取すると、心拍が速くなり、動悸を感じることがあります。
一方、アルコールはリラックス作用があるとされますが、摂取後に血管が拡張して血圧が一時的に低下することで、反射的に心拍数が上がることがあります。また、アルコールは睡眠の質を低下させたり、自律神経のバランスを乱したりすることがあり、これも心拍数の変動に影響を与える要因となります。カフェインやアルコールに対する感受性が高い方や、普段から多量摂取している方は、頻脈に似た症状が出やすくなることがあるため注意が必要です。摂取後に動悸や脈の速さを感じる場合は、量や飲むタイミングを見直しましょう。

体質

はっきりとした疾患がなくても、生まれつき脈拍が速くなりやすい体質の方も存在します。こうした場合、安静時でも心拍数がやや高めで、1分間に90〜100回程度になることがあります。心拍数は年齢、体格、筋肉量、基礎代謝、自律神経の働きなどの身体的要因によって変化します。特に、交感神経の活動が副交感神経よりも優位になりやすい傾向がある方では、特別な刺激がなくても心拍数が上がりやすいことがあります。このような状態は、疾患による異常ではなく、体質による正常な個人差と見なされることが多いです。ただし、「体質だから」と自己判断することで、他の原因を見落とす恐れもあるため、動悸や息切れ、疲れやすさなどの症状がある場合は、医療機関で心臓や自律神経の状態をチェックしましょう。

心拍数が高いとき行う検査

12誘導心電図検査

心臓が発する微弱な電気信号を波形として記録し、心臓の構造や働きに異常がないかを調べます。

ホルター心電図検査

院内で検査機器を装着した後、ご自宅でいつも通り過ごしていただきながら、2種類の心電図波形を24時間連続で記録する方法です。一般的な心電図では捉えにくい不整脈の頻度などを細かく記録することが可能です。検査終了後は機器を医院にお持ちいただき、その場で解析を行い、当日に結果をお伝えします。

心エコー検査

体外から超音波を当て、その反射波を受信し、心臓の状態を画像として描き出す検査です。心疾患の有無に加え、心臓の機能、心筋の厚さや動き、形状などを細かく確認することが可能です。

心拍数が高いときの治療

生活習慣の改善

頻脈が軽度であり、心臓や内科的な疾患がはっきり診断できない場合は、まず生活習慣の改善から始めていきます。
食事では、栄養バランスを意識し、脂質・塩分・糖分の過剰摂取を控えることが大切です。
加えてウォーキングや軽いストレッチなど、継続しやすい有酸素運動を続けると、自律神経のバランスが整い、心拍が安定しやすくなります。
また、睡眠の質を確保することも重要で、就寝・起床の時間をきちんと決め、睡眠不足や不規則な生活を避けるよう意識しましょう。さらに、カフェインやアルコールの過剰摂取、精神的ストレスも、交感神経を刺激し、頻脈を悪化させてしまう要因ですので、これらの影響を減らすよう習慣を見直すのも良いでしょう。
生活習慣の改善は、薬物療法を行わずに心拍を整える基本的な方法です。頻脈の予防や再発防止にも期待できるので、症状が軽い方はまずご自身の生活を振り返り、徐々に改善していきましょう。

薬物療法

症状が強く現れている方や、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない方には、心拍数を調整するために、薬物療法を行います。
使用される主な薬には、脈拍を抑えてリズムを整える作用を持つ抗不整脈薬やβ遮断薬などがあります。
これらの薬は心臓の興奮を抑えることで、過剰に速くなっている心拍を安定させる作用が含まれています。また、頻脈の原因が心房細動によるものだった場合には、脳梗塞予防のために、抗凝固薬を用います。抗凝固薬は、血液が固まりにくい状態を維持させ、血栓の形成を防ぐのに有効です。
薬は適切に服用すれば高い効果に期待できますが、副作用のリスクも避けられません。そのため、医師の診察と指導のもとで使用することが重要です。自己判断で服用を中止したり、薬の量を変更したりするのは禁物です。安全に治療を受け続けるためには、定期的な診察に加えて、血液検査などによる経過観察が不可欠です。