- マイコプラズマとは
- マイコプラズマ肺炎の症状
- マイコプラズマ肺炎の原因と潜伏期間
- マイコプラズマ肺炎の検査
- マイコプラズマ肺炎の治療法・早く治す方法は?
- マイコプラズマ肺炎の合併症
- マイコプラズマ肺炎は出席停止になる?
マイコプラズマとは
マイコプラズマとは、風邪や肺炎、気管支炎などを引き起こす細菌の一種です。
ただし、一般的な細菌とは構造が少し異なっており、特徴的な性質を持っています。
通常の細菌は、細胞膜と細胞壁の二重構造で体が囲まれていますが、マイコプラズマには細胞壁がなく、細胞膜のみで構成されています。この構造の違いから、それ以外の細菌とは区別されており、治療に使われる抗生物質も一般的なものでは効果が期待できません。そのため、マイコプラズマに特化した薬が必要になります。
また、増殖の仕方にも特徴があります。ウイルスのように他の生物の細胞に寄生して増えるのではなく、細菌と同じように自力で増殖することができるとされています。
マイコプラズマ肺炎の症状
初期症状
感染後、まずは上気道(鼻から喉のあたり)に症状が現れ、発熱、咳、喉の痛み、鼻詰まり、鼻水などが見られます。特に咳は、時間の経過とともに少しずつひどくなり、熱が下がった後も3〜4週間ほど続くのが特徴です。
感染した方の多くは、気管支炎(肺に空気を送る気道の炎症)で済みますが、なかには下気道(喉の声帯あたりから肺まで)にまで感染が広がり、肺炎を引き起こすケースもあります。さらに、重症化することもあります。
後期症状
マイコプラズマ肺炎が進行すると、後期には以下のような症状が現れることがあります。
- 胸の痛みを伴う咳
- 筋肉痛
- 倦怠感
- 頭痛
年長児や青年の場合、湿った咳が現れやすい傾向があります。また、気を付けるべき症状として、長期間にわたる高熱や強い咳、噴水のように嘔吐した、発疹、落ち着かない様子などが挙げられます。高熱や強い咳などの症状が数日続いた場合は、医療機関へ受診してください。
マイコプラズマ肺炎の原因と潜伏期間
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという細菌に感染することで発症します。
感染経路には、飛沫感染と接触感染が挙げられます。
感染経路
飛沫感染
感染者が咳をした時の飛沫を吸い込むことで感染します。
接触感染
感染者との接触により感染します。
マイコプラズマ肺炎は、濃厚接触(感染者の近くで長時間いること)によって感染します。そのため、感染リスクが高いのは、感染者と過ごす時間が長いご家族やご友人です。濃厚接触を介して感染するため、地域での感染拡大の速度は比較的遅く、学校などの集団生活の場であっても、短時間の暴露(病原菌にさらされること)では流行する可能性は少ないとされています。
潜伏期間
マイコプラズマ感染症の潜伏期間は、一般的に2〜3週間程度ですが、1〜4週間の範囲で個人差があります。
潜伏期間のうちは自覚症状がほとんど出ず、知らず知らずのうちに周囲へ感染を拡大させてしまうこともあります。咳や喉の痛み、発熱、倦怠感など、風邪に似た症状が現れます。
マイコプラズマ肺炎の検査
画像検査
マイコプラズマ肺炎の患者様の胸部をX線検査やCT検査で見ると、「すりガラス陰影」と呼ばれる像が確認できます。他の病気でも同じような陰影が現れることがあるため、これだけで診断を確定することはできません。他の検査を組み合わせて総合的に診断を行います。
血液検査
マイコプラズマに感染すると、体は病原体に対抗するためにマイコプラズマ抗体が生成されます。血液検査では、この抗体の量を調べます。また、病原体を排除しようとする反応の一環として、体内ではCRP(C反応性タンパク)という炎症性のタンパク質や白血球の数が増加するため、これらの値も併せて調べていきます。
迅速検査
綿棒で喉の奥の粘膜をぬぐった液の中に、マイコプラズマが含まれているかどうかをチェックする検査です。検査時間は10~30分程度で、すぐに結果が得られる検査キットを使用します。
この検査はスムーズにできて、すぐに結果が分かるメリットもある一方で、検査のタイミングなどによって結果が左右されることもあります。そのため、他の検査結果や問診内容も総合的に診てから診断します。
マイコプラズマ肺炎の治療法・早く治す方法は?
基本の治療は抗菌薬
マクロライド系と呼ばれる抗菌薬は、マイコプラズマを死滅させるのに有効です。
しかし、近年ではマクロライド系が効かない病原体も見られるようになってきたため、効果が得られない場合にはニューキノロン系やテトラサイクリン系の抗菌薬に変更して治療を続けることがあります。
症状がひどい場合は対症療法
咳がひどい場合には、抗菌薬だけでなく咳止め薬を、熱が高い場合には解熱薬を併用することもあります。また、合併症があった場合には、その病気を治療するための薬も処方します。
自宅での過ごし方
ご家庭ではできる限り安静にし、水分を補給しながら過ごすようにしてください。熱が下がってきたら入浴しても構いませんが、長風呂は控えましょう。
咳がひどい場合には、ゼリー飲料など、咳の症状が辛くても食べやすい食品を選ぶとよいでしょう。
夜間や早朝の時間帯では咳がひどくなる傾向が強いです。仰向けで寝ると息苦しくなる場合には、うつぶせ寝にしましょう。
また、空気の乾燥は症状を悪化させる恐れがあるため、マスクや加湿器などを活用して湿度を適切に保つようにしましょう。
マイコプラズマの潜伏期間は2~3週間と比較的長いです。そのため症状が落ち着いた後でも、病原体が体内に残存している可能性があります。
しばらくの間は登校・登園・通勤時にはマスクを着用し、感染予防に努めましょう。
また、咳が落ち着くまでは激しい運動を避けてください。
マイコプラズマ肺炎の合併症
中耳炎
中耳腔(ちゅうじくう)という鼓膜の奥に存在している空間が感染し、炎症が生じてしまう状態です。耳の痛み、耳だれ、高熱などの症状が見られます。
胸膜炎
肺の表面を覆う胸膜という薄い組織に、炎症が生じている状態です。胸痛、息苦しさ、背部痛などの症状があります。
心筋炎
心臓の筋肉である心筋に炎症が生じている状態です。下痢、嘔吐、胸痛、息苦しさ、失神などの症状が見られます。
髄膜炎
脳と脊髄を包む膜に炎症が生じてしまう状態です。腹痛や下痢、嘔吐、項部硬直(こうぶこうちょく:頭を胸の方へ曲げることに抵抗がある状態)などが現れます。
マイコプラズマ肺炎は出席停止になる?
マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法で第三種感染症に分類されています。
第三種感染症は、症状により学校医その他の医師が感染の恐れがないと認められるまで、出席停止とされているため、明確な出席停止期間ははっきりと定められていません。
一般的には、解熱してから2日程度経過すれば、日常生活に支障がないとされています。