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不整脈

子どもの不整脈とは

成人と同じように、子供にも様々な不整脈が見られます。
しかし、成長の時期によってその特徴は異なります。

胎児期

胎児期にも不整脈が認められることがあり、種類によっては重篤な影響を及ぼす場合があります。
特に重症な不整脈では、死亡の原因となることもあるため、早期に診断・治療を行う必要があります。

新生児期~乳児期

生後間もない新生児では、上室期外収縮などの不整脈が認められることがありますが、多くの場合は数日以内に自然に消失します。しかし、上室頻拍や心房粗動などの頻脈性不整脈がある場合には注意が必要です。
小児では心房細動は術後症例を除いて稀ですが、頻脈性不整脈は成人よりも短時間で心不全に陥ることがあるため、早期に積極的な治療が求められます。

幼児期以降

幼児期になると、不整脈の頻度は一時的に減少しますが、その後は年齢とともに徐々に増加する傾向があります。上室期外収縮、心室期外収縮、1度〜2度の房室ブロック、完全右脚ブロック、WPW症候群などの不整脈が増えてきますが、これらの多くは無症状であることがほとんどです。
学校心臓検診では、健康と思われていた児童生徒の中に、こうした無症状の不整脈が発見されることがあります。小学生では約1%、中学生では約1.5%、高校生では約2%の割合で何らかの不整脈が認められています。ただし、学校検診で発見される不整脈の多くは、明らかな基礎心疾患を伴わないケースや、定期的な診察が不要なケースもあります。
しかし、稀に心室頻拍や上室頻拍などの不整脈が発見されることもあり、心拍数が非常に多い場合には、動悸やめまい、失神、さらには突然死に繋がる危険性もあります。このような症状がある場合や、運動によって不整脈が誘発される場合には、精密な検査や治療を受ける必要があります。

不整脈の症状チェック

お子様が脈の違和感や動悸、息切れなど、心房細動を疑うような症状を訴えた場合は、できるだけ早くご相談ください。ここでは、親御さんがご家庭でお子さんの心臓のリズムを確認するためのポイントをご紹介します。

  1. まず、人差し指・中指・薬指の3本の指を使って、お子様の手首の親指側に軽く触れてください。指の腹の部分で触れると、脈を感じ取りやすくなります。
  2. そのまま10秒間ほど脈をとってみましょう。
  3. もし「少しおかしいな?」と感じた際は、さらに10秒間脈をとってみてください。
  4. 脈が一定のリズムで打っていれば、通常は問題ありません。しかし、脈が飛ぶように感じたり、リズムが不規則に感じたりした場合は、念のため担当医師に相談することをお勧めします。
正常なリズム トン・トン・トン・トン…
脈が飛ぶようなリズム ト・トン・トントントン…
不規則なリズム ト・トン・・トン・ト・ト…

不整脈の種類と治療

不整脈は大きく分けると、1分間の脈拍数が100回以上になる「頻脈」、1分間の脈拍数が50回以下になる「徐脈」、そして時々脈が飛ぶように感じる「期外収縮」の3つに分類されます。

頻脈性不整脈

脈拍が1分間に100回以上

頻脈はさらに細かく分類され、心房細動、心房粗動、心房頻拍、発作性上室性頻拍、心室細動、心室頻拍などがあります。特に心房細動は、心臓内に血液の塊(血栓)ができやすく、これが脳に飛ぶことで脳梗塞を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
これらの頻脈性不整脈はいずれも、動悸や息切れ、めまい、ふらつき、冷や汗などの症状を伴うことがあり、重度の場合には失神を起こすこともあります。中でも心室細動や心室頻拍は、突然死の原因となる可能性がある重篤な不整脈であり、迅速な診断と治療が求められます。

心房細動

心房細動は、治療が必要な頻脈性不整脈の中では一番多く見られる疾患です。心房が異常に興奮することで心拍リズムが不規則になり、心拍数が40〜230回と大きく変動します。その結果、血液の流れが滞り、血栓が形成されやすくなります。血栓が脳に流れると脳梗塞を引き起こす恐れがあり、特に高齢者は注意が必要です。
心房細動の原因は多岐にわたります。加齢が主な要因とされているほか、心臓弁膜症、先天性心疾患、高血圧、心筋梗塞、心筋症などの心臓病が直接的な原因となることがあります。また、健康な方でも喫煙、過剰な飲酒、ストレス、睡眠不足などの生活習慣や自律神経の乱れによって心房細動が起こることがあります。さらに、睡眠時無呼吸症候群や甲状腺機能亢進症などの疾患も、リスクを高める要因とされています。
心房細動の主な症状には、動悸、息切れ、胸の不快感、倦怠感、めまい、失神などがあります。放置すると心不全のリスクが上昇するため、早期の診断と治療が重要です。治療には、血栓予防のための抗凝固療法、心拍リズムを整えるための薬物療法(β遮断薬や抗不整脈薬)、そしてカテーテルアブレーションがあります。

発作性上室性頻拍

発作性上室性頻拍は、突然1分間に100〜200回という速いリズムで脈が打ち、突然止まるという特徴を持つ発作性の不整脈です。発作中に心電図を記録することで診断が可能ですが、発作の持続時間が短い場合は心電図をとることができず、確定診断が難しいケースもあります。
主な症状としては、突然の動悸、息切れ、胸の圧迫感や痛み、めまい、失神などが挙げられます。発作が短時間で自然に収まることもありますが、頻繁に起こる場合は生活の質に影響を及ぼすため、適切な治療が必要です。
発作時の治療には、迷走神経を刺激する方法(Valsalva法など)や薬物療法が用いられます。また、カテーテルアブレーションが検討されることもあります。

心房粗動

心房の異常な電気経路によって心拍数が速くなる頻脈性不整脈の1つです。心房が傷つけられることで新たな電気の経路が形成され、心拍数が1分間に120〜150回と速い状態になります。心拍リズムは規則的になっているケースもあれば、不規則になることもあります。心臓への負担が大きくなるため、様々な合併症を引き起こす要因になります。
心房粗動の原因としては、心房細動の治療に使用される抗不整脈薬(ピルジカイニドやプロパフェノンなど)の影響が挙げられます。また、甲状腺機能亢進症、肥満、睡眠時無呼吸症候群などの基礎疾患も関与しています。さらに、心臓外科手術や心房細動のアブレーション後に傷ついた部位の周囲で電気の旋回路が形成されることも、心房粗動の原因となります。
主な症状は動悸や息切れですが、自覚症状がないケースもあります。放置すると心不全のリスクが高まるため、早期の診断と適切な治療が重要です。治療には、カテーテルアブレーションや薬物療法が行われます。

心室頻拍

心室頻拍は、心室で1分間に120回以上の電気刺激が発生する頻脈性不整脈です。心筋梗塞や心筋症などの基礎疾患によって心室筋がダメージを受けた場合に起こることが多いですが、特に明確な原因がなく発症することもあります。
症状としては、動悸を感じる程度のものから、失神、さらには最悪の場合には突然死に至るケースもあります。ただし、基礎疾患がない場合には、命に関わる可能性は比較的低いとされています。
心室頻拍は、持続性や症状の重さによって対応が異なります。症状がある場合や、心疾患の既往がある方は、早期に医療機関での診断と治療が必要です。

心室細動

心室細動は「致死性不整脈」とも呼ばれ、生死を左右するほど極めて重い不整脈です。主な原因としては、心筋梗塞、ブルガダ症候群、QT延長症候群などが挙げられますが、原因が特定できない特発性心室細動も存在します。
心室細動では、心室筋が正常に収縮できなくなり、血液を全身に送り出すことができなくなります。その結果、脳や心臓への血流が途絶え、意識を失い、迅速な救命措置を行わなければ死に至る可能性があります。
救命のためには、できるだけ早くAED(自動体外式除細動器)による電気ショックを行うことが必要です。

徐脈性不整脈

脈拍が1分間に50回以下

徐脈とは、脈拍数が1分間に50回以下の状態を指します。はっきりした理由がなく徐脈が生じた場合は、心臓の刺激伝導系に異常がある可能性が高いです。その場合はペースメーカーの植え込みが必要となる可能性があります。症状としては、全身の倦怠感、脱力感、めまい、ふらつき、失神、息切れなどが見られます。
徐脈性不整脈は、3つに大きく分類されます。1つ目は洞不全症候群で、洞結節の障害により、一時的に電気信号が送られなくなったり、信号の頻度が低下したりする不整脈です。2つ目は房室ブロックで、心房から心室へ拍動の電気信号が伝わらない、または伝わりにくくなる不整脈です。そして、3つ目は徐脈性心房細動・粗動で、房室結節での電気信号の伝達が極端に低下した不整脈です。
これらの徐脈性不整脈に対する治療法として、現在最も確立されているのが植込式ペースメーカーの植え込みです。
この治療は、①徐脈に伴う症状(めまい、失神など)の改善、②突然死防止、③心機能低下や心不全の予防・改善を目的としています。
手術は局所麻酔で行われ、植め込む部位は通常左側(または右側)の前胸部です。鎖骨下の皮膚を切開し、電極リードを静脈から心臓内に挿入して右心房・右心室(single chamberの場合はどちらか一方)に固定します。その後、ペースメーカー本体を留置するポケットを皮下に作成し、本体を挿入して縫合して終了します。電池交換の際は、リードに問題がなければ本体のみを交換して縫合します。
退院後は、ペースメーカー外来で半年から1年ごとに経過観察を行います。徐脈性不整脈に対する第一選択の治療法として、広く確立されています。

洞不全症候群

洞不全症候群は、心臓のリズムを調整する洞結節に障害が生じることで、一時的に電気信号が送られなくなったり、信号の頻度が低下したりする不整脈です。この疾患の治療は、徐脈に伴う症状(めまい、失神など)を改善することを目的としています。

房室ブロック

房室ブロックは、心臓の上部(心房)から下部(心室)へ拍動の電気信号がスムーズに伝わらなくなる不整脈です。
心房と心室の境界には、房室結節(ぼうしつけっせつ)という組織があり、電気の流れを調節する「変電所」のような役割を担っています。この房室結節の機能が低下すると、心房から心室への電気信号が遮断され、心室が上手く収縮できなくなるのです。
「ブロック」とは、「道をふさぐ」「進行を妨げる」という意味であり、電気信号の通り道が妨げられる状態を指します。
房室ブロックの治療では、突然死の予防が重要な目的となります。

また、洞不全症候群や房室ブロックなどがある場合には、ペースメーカーの植え込みが検討されることがあります。
ペースメーカーの植え込みでは、左肩の血管から電極付きのリードを心臓内に挿入し、ペースメーカー本体に接続した後、本体を皮下に植え込みます。この電極が心臓の動きを感知し、脈が遅くなった場合には、本体から電気刺激が送られて心臓を刺激し、正常な拍動を促します。
手術は局所麻酔で行うことが可能で、所要時間は約60~90分程度です。
ペースメーカー本体は500円玉より一回り大きい程度のサイズで、皮下に植え込まれるとほとんど目立ちません。電池で作動しており、永久に使えるわけではありません。一般的な使用での寿命は約7~8年程度です。
電池の残量は外来で定期的にチェックし、残量が少なくなってきた場合には、本体のみを交換する必要があります。

期外収縮

期外収縮とは、瞬間的に脈が飛ぶように感じる不整脈の一種です。症状としては、脈が抜ける感じや、瞬間的に「ドキッ」とするような違和感を覚えることがあります。
この不整脈には良性のものと、心機能に障害がある場合に生じるものがあります。心臓に病気がなく、運動負荷試験でも症状が悪化しないような期外収縮は、生命に危険を及ぼすことはほとんどありません。
しかし、心筋症、弁膜症、心不全、心筋梗塞後などで心機能が低下している場合には、期外収縮が重症化する可能性があるため、原疾患の治療を含めた対応が必要となります。

不整脈の原因

不整脈の原因は多岐にわたりますが、主なものとして以下のような要因が挙げられます。

  • 生活習慣:食生活の乱れ、運動不足、睡眠不足、ストレス、喫煙、過度な飲酒などは、不整脈のリスクを上昇させます。
  • 心臓病:心筋梗塞、心不全、弁膜症などの心臓の病気は、不整脈の直接的な原因となる恐れがあります。
  • 遺伝:ご家族の中に不整脈の方がいる場合、そうでない方よりも発症リスクが高まります。
  • 薬の影響:薬剤の中には、不整脈を引き起こす副作用があるものも存在します。
  • 加齢:加齢に伴い、心臓の筋肉・神経の働きが弱くなり、不整脈のリスクが高まります。

先天性心疾患による不整脈

先天性心疾患では、各疾患に特有の不整脈が認められることがあります。不整脈の種類によっては、病状が悪化する可能性もあるため注意が必要です。
手術後には、完全右脚ブロック、上室期外収縮、心室期外収縮、房室ブロックなどの不整脈が見られることがあります。これらの不整脈は、多くの場合、経過観察のみで問題ないと考えられます。
しかし、稀に心室頻拍、上室頻拍、心房粗動、心房細動、洞不全症候群などの重篤な不整脈を合併することがあり、その場合には治療が必要となることが多いです。症状がある場合や不整脈が疑われる場合には、主治医や専門医と相談することが大切です。
また、術後から数年が経過していても、新たに不整脈が出る可能性もあります。そのため、術後でも長期間にわたる経過観察が必要です。

不整脈(房室ブロック)の重症度について

房室ブロックは重症度に応じて、1度・2度・3度と分類されます。
運動の回数が多い方や若年者では、迷走神経という神経の働きが高まることで、生理的現象として房室結節からの電気信号が少し伝わりにくくなり、1度または2度のブロックが発症する可能性があります。ただし、無症状であれば過度な心配は要りません。
ただし、心筋梗塞や心筋症などの病気を発症している方が、2度〜3度の房室ブロックが起こった場合には、脈が極端に遅くなったり、時に心臓が一時的に止まってしまうことがあるため注意が必要です。
洞不全症候群と同じように、脈が遅くなることでふらつきやめまい、失神、心不全などの症状が現れることがあります。
房室ブロックは洞不全症候群と異なり、原因となる疾患が隠れていることが多いため、正確な検査が不可欠です。治療が必要となるのは、脈が遅くなることで失神やふらつき、息苦しさなどの症状が出た時です。軽度の場合には薬物療法を行うこともありますが、多くはペースメーカーの植え込み手術を余儀なくされます。また、無症状の場合でも3度の房室ブロックがある方には、ペースメーカーを植え込むのが望ましいとされています。

不整脈の人がやってはいけないことは?

頻脈性不整脈

不整脈がストレスやアルコール、喫煙、カフェインなどと関連して起こっている場合には、それらの要因を避けるようにしましょう。薬が処方されている場合は、医師の指示に従ってきちんと服用してください。
また、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病や心臓の病気は不整脈のリスクを高めるため、規則正しい生活を心がけて予防に努めることが大切です。心臓の病気を抱えている場合には、その治療をきちんと受けてください。

徐脈性不整脈

不整脈のきっかけとなっている薬などを服用されていましたら、それらを控えると良いでしょう。ペースメーカーを植え込んでいる場合には、電池が続く限り、脈が極端に減ってしまう心配は要りません。ペースメーカーの作動状況を確認するために、定期的に外来でのチェックを受けるようにしましょう。また、ペースメーカーの使用に関する注意事項(電子レンジやIH炊飯器・ドライヤーに近づけない、低周波治療は受けないなど)は必ず守りましょう。