小児科って何歳まで受診するもの?
2025.10.24
――思春期の子どもと医療のかかわり方を考える――
-
「そろそろうちの子も中学生。もう小児科は卒業かな?」
診察室でよく耳にする言葉です。
発熱や咳で受診するたび、幼いころから通ってきた小児科の待合室で、周囲が小さな子どもばかりだと、なんとなく「もう場違いかも」と感じる保護者の方も多いようです。
では実際、小児科は何歳まで受診してよいのでしょうか。
-
■「小児科」の定義と対象年齢
-
中学生・高校生の年代は、心身ともに大きく変化する「思春期」です。
体つきは大人に近づきますが、ホルモンのバランスや心の成長はまだ不安定。
睡眠リズムが乱れたり、頭痛や腹痛などストレスによる症状が出たり、生活習慣病の入り口に立つケースもあります。
この時期は「大人の体」への移行期であると同時に、「子どもの医療から成人医療へと移る時期」でもあります。
思春期の医療には、成長・発達の視点を持ちながら、本人の自立を支える姿勢が求められます。
これはまさに小児科医が最も得意とする領域なのです。
-
■小児科で診るメリット
-
もちろん、いずれは成人診療科へ移っていくことになります。
一般的には、高校卒業を目安に内科や各専門科へ紹介するケースが多いです。
ただし、疾患によってはもう少し早く移行することもあります。
たとえば糖尿病やてんかん、先天性心疾患など、成人後も継続的な治療が必要な病気では、**小児科と内科が連携して「トランジション(移行医療)」**を進めるのが理想です。
この移行期医療は、単に「主治医が変わる」というだけでなく、本人が自分の病気を理解し、主体的に医療に関われるようにするプロセスです。
小児科医は、保護者と本人の橋渡しをしながら、安心して次のステップへ進めるよう支えます。
-
■本人の気持ちも大切に
-
思春期の医療では、保護者の関わり方も少しずつ変わります。
診察室に一緒に入るかどうか、病状説明を本人にどう伝えるか――これらは成長に合わせて調整していきます。
15歳前後になったら、医師と本人だけで話す時間を設けることもあります。
それは「親を排除するため」ではなく、「本人の自立を促すため」です。
親としては「まだ任せて大丈夫かな」と心配になりますが、医療の場で少しずつ自分の健康を自分で考える経験を積むことは、将来の大きな財産になります。
親子で一緒に医療を卒業していく――そんなイメージで見守っていただけたらと思います。もちろん、ご両親に共有してほしい診療情報があるような場合は、我々の方から何らかの形で共有していきます。
-
■まとめ:小児科は「年齢」ではなく「成長段階」で考える
