子どもの自律神経調節障害──「なんとなく不調」を理解し、日常でできるサポート
「朝になると頭が痛い」「学校に行こうとするとお腹が痛くなる」「めまいがして立っていられない」──こうした訴えを繰り返すお子さんを前に、「本当に具合が悪いのか、学校に行きたくないだけなのか」と悩まれる保護者の方は少なくありません。
しかし、実際には身体の“自動調節システム”である 自律神経がうまく働かないことで起きる不調 が背景にあることも多く、この状態を自律神経調節障害と呼びます。
小児科ではとてもよく見られる状態で、特に小学校高学年から思春期にかけて増えていきます。今日は、お子さんの日常生活で気をつけたいポイントを、小児科医の視点から解説していきます。
■ 自律神経は「気合い」で動くものではない
自律神経は、心臓の動き、血圧、体温、胃腸の働き、睡眠覚醒リズムなど、「意識しなくても身体が維持される仕組み」を支える大切な機能です。
しかし現代の子どもたちは、
睡眠不足
朝食欠食
運動不足
長時間のゲーム・スマホ
過密なスケジュール
などの影響を受けやすく、自律神経が乱れやすい生活を送りがちです。
自律神経調節障害のお子さんは、検査では異常が見つからなくても、身体が「うまくスイッチを切り替えられない」状態になっています。保護者のかたが理解してあげることで、症状はぐっと楽になります。
■ 日常でできる対策① 「睡眠習慣を整える」
- 就寝時間は“固定”する
大人以上に子どもの体内時計はデリケート。
特に就寝時間を毎日30分以上ズラさないことが大切です。
- 朝はカーテンを開けて太陽の光を浴びる
朝の光が、乱れた体内時計をリセットします。
起床後10〜15分の光で十分です。
- 寝る前のスマホ・ゲームは控える
ブルーライトというより、「興奮状態になるコンテンツ」が自律神経を刺激します。
寝る1時間前は“デジタル機器クールダウン”時間にしましょう。
■ 日常でできる対策② 「朝のルーティンを“自律神経仕様”に」
- 朝食は必ず摂る
血糖値が上がることで、身体の“活動モード”がONになります。
パンでもご飯でも構いませんが、水分摂取も重要。
起きてすぐコップ一杯の水を飲むだけでも、血圧が安定しやすくなります。
- 冷たい水も効果的
めまいや立ちくらみが出やすい子は、起床後に冷たい水を200mlほど飲むと、血管がキュッと締まり血圧が維持しやすくなります。
■ 日常でできる対策③ 「運動は“薬”である」
自律神経を整えるうえで、運動以上に効果的な方法はほとんどありません。
とはいえ、「毎日ランニングをしなさい」と言うと返って逆効果です。
おすすめは以下のような“軽い有酸素運動”
散歩
自転車
ラジオ体操
軽い縄跳び
軽い水泳
ポイントは心拍数が少し上がる程度で10〜20分。
週に3回でも十分効果が見えます。
運動にはメンタル面の安定にも効果があり、特に朝の運動は体内時計が整いやすくなります。
■ 日常でできる対策④ 「水分と塩分は“体調の土台”」
自律神経調節障害の子は血圧が低めで、立ちくらみやめまいが起きやすいことがあります。
- 小学生:1日1〜1.2L
- 中学生:1.5L程度を目安に
スポーツドリンクよりも経口補水液の方が、症状の強い子には効果が高い場合もあります。
また、汗をかきやすい季節や運動する日は、
梅干し・味噌汁・塩こんぶなど、自然な塩分補給がおすすめです。
■ 日常でできる対策⑤ 「“がんばれ”ではなく“整える”」
自律神経の不調は、精神的な問題・怠け癖とはまったく違います。
保護者の方が理解してくれているというだけで、子どもは驚くほど安心します。
- 言ってはいけない言葉
「気の持ちようでしょ」
「サボってるだけじゃないの」
「もっと頑張りなさい」
- 代わりにかけたい言葉
「身体が本調子じゃないんだね」
「まずは整えていこう」
「少しずつ良くしていこうね」
「頑張れ」は、本人はとっくに頑張っている時にはつらい言葉です。
“整える”ことに意識を向けてあげると、前向きさを取り戻しやすくなります。
■ 学校との連携も大切
症状が強いお子さんは、無理に満点登校を目指す必要はありません。
小児科から学校へ、
保健室利用の調整
朝の体調不良時の時差登校
体育の負荷軽減
休み時間の水分補給
などを提案することで、学校生活がずっと楽になります。
保護者だけで抱え込まず、学校側と一緒に“できる範囲で続けられる学校生活”を作っていきましょう。
■ まとめ:自律神経は“育てる力”。焦らず、長い目で
自律神経調節障害は、
「成長期の子どもが一時的に経験しやすい不調」 と考えてください。
時間をかけて生活リズムが整えば、多くのお子さんは改善します。
早めに気づき、早めに生活習慣を整えることで、将来の体調管理力にもつながります。
「なんとなく不調」を見逃さず、
「できることを一つずつ」
家族で取り組んでいけるよう、小児科としてしっかりサポートしていきま
