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子どもの発達凸凹との向き合い方

■はじめに:診断はゴールではなく、スタート
「発達障がいの可能性があります」 医師や専門機関からこう伝えられたとき、多くの保護者が戸惑い、不安を抱きます。 「育て方が悪かったのでは?」「この子の将来はどうなるの?」「どう関わっていけばいいのか分からない」 そんな思いを抱くのは当然です。けれど、発達障がいの診断は、決して“終わり”ではありません。むしろ、“その子を深く理解するための入口”ともいえるでしょう。診断名にとらわれすぎず、目の前にいる子ども一人ひとりと、どう関わり、どう育ちを支えるか。その視点がとても大切だと思います。私は、それを障害と考えるよりは、発達の凸凹ととらえて、この先この凸凹をどのように社会の中でフィットさせていくことができるだろうかと考えていくことが大切だと思います。
■子どもの行動の「背景」を見る
発達凸凹のある子どもたちには、それぞれに「困りごと」があります。でも、それはわざとではなく、「そうせざるをえない理由」があるのです。 例えば、 じっと座っていられない子は体を動かしていないと不安になる、感覚が敏感で椅子が気持ち悪い 友達とのトラブルが多い子は相手の気持ちを読み取るのが苦手、言葉の裏を汲み取れない 指示が通りにくい子は一度に複数の情報を処理するのが難しい、言葉より視覚的な情報の方が得意 など。 こうした行動の背景には、「苦手さ」や「脳の特性」があって、その特性に気づいて接し方を工夫することで、子どもたちはぐんと落ち着いたり、安心できるようになります。
■「できないこと」ではなく、「できること」に目を向ける
子育てをしていると、どうしても「できないこと」に目が向きがちです。 なんで言ったことができないの? 他の子はちゃんとできるのに… 何度言っても同じことを繰り返す…
    でも、その子が「できていること」「興味を持っていること」に目を向けてみてはどうでしょうか。発達凸凹のある子どもは、「得意」「不得意」の差がとても大きいことが特徴です。不得意な部分をサポートしながら、得意な部分をうまく活かすと、自信につながります。 たとえば、 数字に強い → 時計やカレンダーで予定を伝える 絵が好き → 気持ちを絵で表現してもらう パズルやブロックが得意 → 空間認知を活かした遊びや学びへつなげる。
「この子は何が好きなんだろう?」「何にワクワクしているんだろう?」と視点を変えることで、接し方が大きく変わっていきます。こうした得意なことをほめてあげる、特にお母さんにほめてもらえることは、子どもたちの自身につながり、自己肯定感の改善につながっていくと思います。
■「がんばらせる」より「環境を整える」
子どもを育てるうえで、「がんばってほしい」という思いは親として自然な感情です。でも、発達凸凹のある子どもにとって、周囲の環境がそのままでは、がんばる以前に「スタートラインにも立てない」ことがあります。
      集団の中で刺激が多すぎる → 静かな場所を作る
      説明が長すぎて理解できない → 短い言葉で指示する/視覚で示す
    急な予定変更に混乱する → 事前に伝える/見通しを立てる
      これらは「特別扱い」ではなく、「合理的配慮」と呼ばれる支援の方法です。「がんばらせる」のではなく、「がんばれるような環境を整える」。それだけで、子どもはぐっと安心して力を発揮しやすくなります。そのうえで、昨日よりうまくできたらほめてあげることを忘れないようにしましょう。
      ■親自身の心も、しっかりとケアして
      子育ては、時に孤独です。特に、発達に特性のある子どもを育てていると、周囲と比べてしまったり、理解されないと感じたりすることも多いでしょう。だからこそ、保護者自身のケアも、とても大切です。 無理に一人で抱え込まない、支援機関やカウンセラーに相談する、同じ立場の保護者同士でつながるなど「ちょっと疲れた」と口に出せる場所を見つけることが大切ですね。子どもの発達は、保護者の安心感と深くつながっています。大人が笑顔でいることは、子どもにとって何よりの「環境整備」になります。私どものところではこういった、発達凸凹のある子どもたちに、ご両親がどのように接していくのか、気持ちをどんな方向に向かせていくのかなどゆっくりお話しさせていただきます。
      ■おわりに
      発達凸凹は「病気」とは考えないでいいと思います。「特性」であり、個性の一部なのでしょう。「普通にしてほしい」「みんなと同じようにしてほしい」と思ってしまう日も、きっとあるでしょう。でも、「その子らしさ」は、決して「間違い」ではありません。 お子さんが、将来その凸凹を、どのように社会にフィットさせていけるのか、そのためには得意な部分(凸の部分)を伸ばしていくことに目を向け、凸凹をならして平らにしようと思わなくてもいいのではないでしょうか。もちろん、発達凸凹を抱える子たちが、のびのびと生きていける社会を目指すために、社会の方の準備も必要でしょう。社会はじょじょに多様性に受け入れる体制を勧めつつあるように思います。そして、今はまずは目の前の親子の関係から意識を変えていくのもいいのではないでしょうか。一発逆転ホームランはないですが、その一歩一歩が、きっと未来を変えていくと信じています。