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インフルエンザ予防接種の基本と最新情報

インフルエンザは毎年冬季に流行し、高齢者や小児、基礎疾患がある人では重症化しやすいため、予防接種が重要になります。今回は、「適切な接種時期」「最近の日本における流行時期」「予防接種の種類と対象年齢」「予防接種の効果と副作用」について、最新の情報をもとにわかりやすく解説します。
1)適切な接種時期
    一般的に広く接種されている「不活化ワクチン」によって作られる抗体は、接種後約2〜4週間で十分に上昇し、約5~6か月効果が持続します。したがって、流行前に接種を済ませることが望ましく、一般的には10月〜11月に接種を行うのが基本です。また近年、鼻からスプレーするタイプの経鼻弱毒生ワクチン「フルミスト」が注目を集めています。フルミストは弱毒化された“生きたウイルス”を鼻腔粘膜に噴霧して免疫をつける仕組みです。自然感染に近い形で免疫をつけるため、より包括的で持続的な効果が期待されます。こちらも一般の不活化ワクチンと同様に流行前に接種するのが基本で、免疫は接種後約2週間で発現し、効果は6か月~約一年持続するといわれています。
    ポイント
  • ・活化ワクチンは13歳未満の小児は2回接種が推奨されており、1回目を早めに(10月初旬〜中旬)に接種するのが望ましいです。
・フルミストは1シーズンに1回で接種が完了します。シーズンに入り次第速やかな接種が推奨されます。
2)最近の日本における流行時期
    日本における最近のインフルエンザ流行時期は、地域によって流行の立ち上がりにばらつきがあるものの、9月~11月に流行入りの報告があり、10月以降に流行が顕在化する地域が増える傾向がみられます。流行のピークは年によって異なり、早い年は11月〜12月にピークを迎えることもあれば、年明けにピークが来ることもあります。最新の疫学情報は国立感染症研究所(NIID)や厚生労働省の速報で随時更新されるため、地域の流行状況に注意してください。
    3)予防接種の種類 日本で季節性インフルエンザ用に主に使われるワクチンは以下のとおりです。 • 不活化ワクチン注射:
主に血液中のIgG抗体を誘導し、発症や重症化を防ぐ効果が中心です。皮下注で接種し、幅広い年齢層に用いられます。 • 経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト):
  • 鼻からスプレーすることで上気道の粘膜に自然感染に近い免疫応答を起こします。つまり、ウイルスが最初に侵入する「入り口」である粘膜でIgA抗体を産生し、感染そのものをブロックする働きを持ちます。両鼻腔に0.1mLずつ噴霧(計0.2mL)するだけなので、痛みや恐怖感が少なく、小児でも受け入れやすいのが特徴です。2〜18歳の方が対象です。 よく見られる副作用として鼻水・鼻閉、のどの痛み、軽い発熱や倦怠感がありますが、数日以内に自然に改善することがほとんどです。
  • ※フルミストを接種できない方(禁忌・注意):
  • 次のような方は、基本的には接種を避ける必要があります。 妊娠中の方・重度の喘息や慢性肺疾患のある方・アスピリン内服中の方・ 免疫抑制状態にある方・卵やゼラチンに重度アレルギー既往のある方 上記に該当する方は、接種可能か医師の判断が必要です。
    4) 接種対象年齢
      <不活化ワクチン> 生後6か月以上~12歳:2回接種が推奨 13歳以上:原則1回接種 高齢者(65歳以上)は毎年1回の定期接種対象 60〜64歳でも一定の基礎疾患がある場合は、接種対象になる自治体があります。
    • <経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト)>2〜18歳の方のみ対象で、1回接種で完了です。
      5)予防接種の効果と副作用
    期待される効果
  • • ワクチンは「発症を完全に防ぐ」わけではありませんが、発症予防効果と、特に高齢者や基礎疾患者における重症化の予防効果が期待されます。
  • • 不活化ワクチン接種では、抗体は接種後約2週間~1か月前後かけて十分な水準に達するため流行の時期に合わせた接種時期の設定が重要です。
  • • 経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト)においても、接種後約2週間で効果が得られるとされており、同様に流行時期に合わせた接種が必要です。 海外で行われた大規模な解析では、ワクチンを受けなかった子どもは18%の確率でインフルエンザに感染したのに対し、フルミストのような経鼻弱毒生ワクチンを受けた子どもではわずか4%しかインフルエンザに罹らなかったという結果が報告されています。約8割も発症リスクが減少した計算で、かなり効果が高いと期待されます。不活化ワクチンと比較して、明らかな効果の優位性は示されていませんが、年齢によってはフルミストの方が良好な成績を示すケースもあり、特に小さなお子さんではフルミストの効果に期待が高まっています。しかし先述したように、喘息など呼吸器に持病がある方にはフルミストが発作を誘発する可能性があり、不活化ワクチン注射を勧める立場を日本小児科学会は示しています。
    接種時の注意点:
  • もし鼻水がある場合は、接種前に鼻をかんで鼻腔内をできるだけクリアにしておくことで、薬液がしっかり届きます。接種後は逆に強く鼻をかまないよう注意します(薬液の一部が排出されてしまう可能性あり)。
  • インフルエンザ治療との間隔にも注意が必要です。フルミスト接種前後にインフルエンザ用の抗ウイルス薬を服用すると、ワクチンのウイルス増殖が妨げられて効果が落ちる可能性があります。接種の2週間前後はこれらの薬を使わないようにしましょう(詳しくは接種医にご確認ください)。
    副作用(注意点)
  • • 不活化ワクチンでは、注射部位の局所症状(痛み、発赤、腫脹など)、発熱、倦怠感などの軽度の副反応が見られますが、通常は数日以内に改善します。強いアレルギー反応(アナフィラキシー)は極めて稀ですが、卵アレルギーのある方への対応は製品やアレルギーの重症度によって異なりますので、医師とご相談ください。
  • • 経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト)では、約30~40%の方で接種後数日以内に鼻汁・鼻閉、咽頭痛、咳などの軽い感冒症状が、数%の方に発熱がみられることが報告されており、多くの場合は軽症で自然軽快することがほとんどです。稀に強いアレルギー反応などの重篤な副作用の報告もされており、必要時は必ず医師へご相談ください。また、接種時にインフルエンザを発症してしまうリスクがあること、および接種後2週間程度は発症していなくてもインフルエンザ抗原検査が陽性と出てしまう可能性がありますので、この点もご留意ください。