小児科って何を診てくれるの?
「熱が出た」「咳が長引く」「食欲がない」
子どもが体調を崩したとき、多くの保護者が最初に思い浮かべるのが「小児科」ではないでしょうか?
しかし実際には、小児科は風邪や発熱などの“よくある病気”だけを診る場所ではありません。
成長や発達の相談、予防接種、心の不調、慢性的な病気の管理など、小児科が担う役割は非常に幅広いのです。
本稿では、「小児科って何を診てくれるところなの?」という疑問にお答えしながら、小児科の守備範囲や専門性、受診の目安について詳しく解説します。
小児科が診る年齢層
小児科が対象とするのは、一般的に新生児~中学3年生くらいまでの子どもです。
ただし、医療機関によっては20歳前後まで診ている場合もあります。
「小児」とは単に年齢のことではなく、成長と発達の途中にある存在を意味します。
赤ちゃんから思春期にかけて、身体の構造や免疫の働き、心の成熟度などが大きく変化していくため、その過程を理解した上で診療するのが小児科医の役割です。
また、低出生体重児や慢性疾患を持つお子さんでは、成人期に移行するまで長期的なフォローが必要な場合もあり、小児科から内科へと丁寧にバトンをつなぐ「トランジション医療」も注目されています。
小児科で診る主な病気
小児科で扱う疾患は非常に多岐にわたります。
大きく分けると、以下のようなものがあります。
1.感染症
2.アレルギー疾患成長
3.達に関する問題
4.慢性疾患の管理心の不調
5.ストレス関連症状
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1.感染症
- 子どもの病気の多くは感染症によるものです。
• 気道感染症:かぜ、咽頭炎、気管支炎、肺炎、中耳炎 など
• 消化器感染症:胃腸炎(ノロウイルス、ロタウイルスなど)
• 尿路感染症
• その他、各種ウイルス感染症など(水痘、突発性発疹 etc.)
子どもは免疫が未熟なため、感染症にかかりやすい一方で、経過や合併症のリスクも大人とは異なります。
小児科では重症化を防ぐための早期診断・治療を行うとともに、家庭や園・学校での感染拡大を防ぐ指導も行います。
2. アレルギー疾患
近年増えているのが、アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・気管支喘息・アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患です。
原因や経過は年齢によって異なり、発達段階に応じた治療やスキンケア、食事指導などが求められます。
アレルギー専門医が在籍している小児科においては、食物経口負荷試験、免疫療法などを行う場合もあります。
3. 成長・発達に関する問題
「身長が伸びない」「体重が大幅に増加した」「言葉の発達が遅い」「落ち着きがない」など、成長や発達に関する相談も小児科の大切な仕事です。
成長曲線や発達検査をもとに、必要に応じて小児内分泌科、発達外来、リハビリ科などと連携して評価・支援を行います。
4. 慢性疾患の管理
先天性心疾患、腎疾患、内分泌疾患、てんかんなどの神経疾患、免疫疾患など、長期にわたり治療や管理が必要な慢性疾患を抱える子どもたちも、小児科が中心となってサポートします。
治療だけでなく、学校生活や社会参加の面からも支援を行うのが小児科の特徴です。
5. 心の不調・ストレス関連症状
「おなかが痛い」「頭が痛い」といった身体症状の背景に、ストレスや心理的要因が隠れていることもあります。
特に思春期の子どもでは、不登校や食欲低下、気分の落ち込みなど、心の不調が表れることも少なくありません。
小児科では身体面・心理面の両面からアプローチし、必要に応じて心療内科や臨床心理士と連携し支援を行います。
小児科が果たす「予防医療」の役割
病気を治すだけでなく、「病気にならないための医療」も小児科の重要な役割です。
予防接種
感染症から子どもを守るために欠かせないのが予防接種です。
小児科では、定期接種(肺炎球菌、五種混合、B型肝炎、麻しん風しん、日本脳炎、水痘など)に加え、任意接種(おたふくかぜ、インフルエンザなど)のスケジュール管理や接種後のフォローも行います。
接種間隔を調整しながら、最適なタイミングで接種を進めるためのアドバイスを受けられるのも、小児科の強みです。
健診(乳幼児健診など)
乳幼児健診では、身体計測、発達の確認、栄養や生活習慣の相談を通じて、お子さんの成長を定期的にチェックします。
ぜひ、「今困っていることを相談できるチャンス」という気持ちで健診を受けてもらうとよいでしょう。
健診で早期に発達の偏りや疾患の兆候を見つけることで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
小児科における専門性の高い領域に関しての連携
小児科の診療範囲は広いため、小児科の中に各専門医が存在し、必要な専門科と連携することも少なくありません。
たとえば、心臓疾患は小児循環器科、神経の病気は小児神経科、精神的サポートが中心となる場合は児童精神科と協力します。
こうした連携を通じて、子どもの「体と心のトータルケア」を実現しているのです。
保護者が知っておきたい受診の目安
「小児科に行くほどではないかも」と迷う保護者も多いでしょう。
しかし、子どもは症状の訴えがあいまいで、急に悪化することもあります。
次のような場合は、早めの受診が勧められます。
• 38℃以上の発熱が続く
• 水分が取れず、尿の回数が減っている
• 顔色が悪い、ぐったりしている
• 呼吸が早い、苦しそう
• 発疹が急に広がっている
• けいれんを起こした
• 嘔吐や下痢が続いている
逆に、軽い鼻水や咳でも、心配なときは気軽に相談して構いません。
小児科は「ちょっとした不安を共有できる場所」でもあるのです。
小児科は「成長の伴走者」
小児科は、単に病気を治す場所ではありません。
こどもが健康に成長するための“伴走者”として、身体の変化、発達、心の揺れ、家族の悩みまでをトータルに支える存在です。
日々の診療や健診を通じて、小児科医は子どもの「今」と「未来」を見守っています。
だからこそ、発熱やけがのときだけでなく、「ちょっと気になる」「成長のことで相談したい」と思ったときにも、気軽に小児科を訪れてみてください。
その一言が、子どもの健やかな未来につながる第一歩になるかもしれません。
